1)エチオピア説
時は6世紀。エチオピアで修行中のキリスト教修道僧が、自生していた赤いコーヒーの実を、ヤギが食べて元気になったのを偶然見かけ、試しにそれを真似て煮たりして食べたところ、眠気もなくなり、元気になるという効果を発見し、これ以降、コーヒーが飲まれるようになったといいます。
2)イエメンのモカ港説
時は13世紀。後にモカ・コーヒー発祥の地として有名になるイエメンの都市モカで、無実の罪で国王から追放されたイスラム教僧侶が、空腹で困っていたところ、小鳥が赤い実を食べているのを見かけ、試しに煎じて飲んだところ、みるみる元気が出たといいます。
中世時代には、イスラム教圏で広まり、特にイスラム教寺院では、1,000年以上も門外不出の秘薬として用いられていました。
ヨーロッパでは、1605年にローマ法王クレメンス8世がコーヒーに洗礼を与えてイスラム教からキリスト教の飲みものとして市民権を認めました。これを契機としてヨーロッパ全土にコーヒーが広まっていきました。
その中でウィーンのエピソードは特に有名です。時は1683年、当時イスラム教圏に属していた、強大なオスマン・トルコ帝国が領土拡張の野望に燃え、キリスト教圏であったハプスブルク帝国首都ウィーンを包囲(いわゆる第2次ウィーン包囲)。ポーランド王の援軍を得て、トルコ帝国軍を敗退させました。この戦争で、ウィーンの街を危機から救ったフランツ・コルシツキーが、トルコ軍の遺留品のコーヒーを元にカフェを開店し、好評を博しました。これがウィンナー・コーヒーの元となりました。いまでも、コルシツキーの銅像がウィーンの街に立っているそうです。