◆ルビー(Ruby)(和名:紅玉)◆
7月の誕生石、牡牛座の守護石


 7月の誕生石で、宝石言葉は、情熱、勇気、自由、威厳。語源は、ラテン語の「ruber;ルーベル」(赤色)から来ています。まさしく、「情熱の赤」という言葉がぴったりな宝石で、古来から多くの人を魅惑していた宝石であり、ダイヤモンドの近代的カッティング技術が確立する17世紀頃まで、「宝石の王」サファイアとならんで、「宝石の女王」はルビーと呼ばれました。そのため、様々な神話、伝記に数多く登場します。例えば、旧約聖書のヨブ記には、「知識の価値はルビーに勝る」と記述されていたことから、聖書時代からルビーはもっとも価値の高い宝石の一つだったことがわかります。
 中世時代には、ガーネット、トルマリン、スピネルなどの赤い宝石はすべてルビーと呼ばれていました。特にスピネルは、ルビーの一種と考えられ、「バラス・ルビー」と呼ばれました。ちなみにスピネルがルビーと全く異なった鉱物であることがわかったのが18世紀になってからです。現在でも、専門家でさえしばしば間違えたりします。あの有名な「ティムール・ルビー」と、イギリス王室秘蔵の「ブラックプリンスのルビー」は、ルビーと呼ばれながら、実はスピネルであることが明らかになっています。
 ルビーは、コランダムという鉱石の一種で、コランダムにCr(クロム)が含まれ、赤色のものがルビー、Fe(鉄)とTi(チタン)を含んだそれ以外の色がサファイアで、まさしく兄弟のような関係にあります。ちなみに、ルビーはクロム量が多くなりすぎると、灰色になってしまい、宝石の価値は無くなってしまいます。
 ルビーの中で最高品質といわれているのが、ピジョンブラッド(鳩の血)と呼ばれるもので、色むらのないわずかに紫を含んだ色調のものです。
 ルビーは、ダイヤモンドに次ぐ硬度であり、また、化学的に安定で、酸に侵されにくく、火災でもルビーだけが無傷で焼け残ったという話があるくらいの耐火性があり、いわば安定性のある宝石です。
 主な産出国は、タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、スリランカ、インド、ケニア、タンザニアであり、特にミャンマー産のルビーは高品質で知られています。ただ、地球上に残されているルビーはあとわずかといわれ、ダイヤモンド以上に希少性の高い宝石となっています。

◎Colum◎
【ティムール・ルビー】

ペルシアのナデーィル・ハーンがムガール帝国との戦いで、352.5カラットという途方もない最大級の大きさのルビーを手に入れました。これが「ティムール・ルビー」と呼ばれ、この宝石は、「アジアの貢ぎ物」と呼ばれ、この宝石を持っているだけで全アジアの支配権として認められたと言います。残念ながら、現在では行方が不明となっています。
 実はこの宝石は、ルビーではなくスピネルであることが現在明らかになっています。

【ブラックプリンスのルビー】
十字軍時代の中世騎士道の花と讃えられたイギリス皇太子は、戦場にあって、常に黒い鎧甲をまとったことから、ブラックプリンス(黒太子)と呼ばれていました。この皇太子にスペイン王ペドロ王が送った赤い宝石が、ブラックプリンス・ルビー。この宝石は、イギリス王冠を飾る宝石として、王冠の中心に飾られ、大英帝国の威厳と意向を知らしめる役割を十分に演じています。
 実はこの宝石は、ルビーではなくスピネルであることが現在明らかになっています。

化学組成Al2O3+Cr
硬度8.8〜9
比重4.0〜4.1


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