常磐炭鉱専用鉄道日渡線
◆2023年1月29日(日)撮影
 日渡線は湯本駅から北に分岐し、湯本村日渡(当時)までの全長760mの路線。
入山採炭株式会社が日渡地区に開発した第4坑で採掘された石炭を運搬するために敷設された専用鉄道。
 ちなみに、入山採炭株式会社は1944(昭和19)年、戦時体制として近隣の磐城炭鉱株式会社と合併し常磐炭鉱株式会社となる。
 第4坑跡は湯本第二小学校の敷地となっている。

開設:1909(明治42)年5月31日
廃止:1967(昭和42)年6月30日

(参考サイト)
http://geo.d51498.com/sendaiairport/onoda/hiwa-1.htm

(常磐炭について)
 常磐炭は、亜瀝青炭と褐炭が多く、北海道や九州の石炭と比べて品質はおちるいわゆる低品位炭であり、さらに地層が激しい褶曲を受けているため、石炭層を求めて地下へとひたすら掘り下げる、高い掘削技術を要する炭鉱であった。地下水が多く、温泉も湧き出すため坑内は暑く過酷な環境で、1tの石炭を採掘するのに4t程度の地下水が湧き出すともいわれ(常磐炭鉱記録映画による)当時世界最大級の排水ポンプを並べるなど採炭コストも高かった。しかし、大工業地帯である京浜地区に近いことから戦前より需要が高く大鉱業地帯として発達した。
 しかし、第二次世界大戦後の1960年代のいわゆる特にエネルギー革命と高度経済成長が起こると慢性的なコスト増で産出資源の競争力が失われた。更にマッチ用の燐、化学工業原料や火薬などの用途があった副産物の硫黄資源も、技術革新により石油の脱硫処理から硫黄がより容易に生産されるようになり、市場から駆逐された。各鉱は採算が次第に悪化。最後まで残った常磐炭礦(1970年より常磐興産)の所有する鉱山も1976年(昭和51)年に閉山し、常磐興産は炭鉱業自体も1985(昭和60)年に撤退した。
Wikipediaより)

「国土地理院の電子地形図25000を掲載(2020年)」
国土地理院発行地形図の引用について
http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html

「この地図は、国土地理院発行の5万分の1地形図(平)(昭和32年発行)を使用したものである。」
国土地理院発行地形図の引用について
http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html

上記地形図には日渡線と向田線の記載が無い。短距離の炭鉱専用路線だったためと推定される。そこで、1946(昭和21)年10月10日米軍撮影の空中写真を見てみるとはっきりと路線が確認される。
(USA-M283-A-10-4)を引用。
国土地理院発行地形図の引用について
http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html
@湯本駅東側

右側が常磐線駅ホーム。左側は現在、駐車場になっていますが、かつての路線跡と石炭の積込施設があったと思われます。

この先路線跡が続きます。
A湯本陸前浜街道踏切

フェンス右側に路線跡らしき空き地が残っています。どうやら真ん中の道路が路線跡では無いようです。
B小和田線との分岐点

左が小和田線、右が日渡線の路線跡。

通り抜けできない理由は小和田線で説明。
C
D宝橋橋梁

昭和45年12月に竣工した、湯本川に架かる宝橋。現在架かる橋は廃線後に架けられた事になります。

その脇には日渡線唯一の遺構であるレンガ積みの橋台があります。こちらは湯本駅方向。

反対の終点方向。

この橋台が残されている理由。いわき市が上水道敷設目的で貸借許可を受けているためで、これが許可標識。

湯本駅方向を拡大撮影。
明治期に鉄道施設に多用されたイギリス積みのレンガ。

終点方向を拡大撮影。

道路に転用された路線跡はもう少し先に続きます。緩やかに曲がっているのがいかにも路線跡らしいです。ちなみに奥に見える山はズリ山で、両脇の建物は、かつての炭鉱住宅で、現在は市営団地になっています。
E湯本第二小学校付近

鉱山施設の跡地には湯本第二小学校が建てられています。

湯本駅方面

路線跡は空き地となっています。

柵には古レールが使用されています。普通の鉄道用に比べて一回り小さいもので、この路線で使用されたものが再利用されているのかも知れません。

ちなみに、この道路はこの先、湯本第二小学校とズリ山跡に建設された常磐市民運動場へ続きます。

中央の道路を横切る形で左右に路線跡が伸びていました。
F

この先、路線跡の一部には建物が建っています。

路線跡は、所々、常磐興産(株)の所有となっています。ちなみに旧常磐炭礦(株)の後継企業で、現在はレジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」を経営する企業として知られます。
G終点

路線跡は、右へと続き終点となります。

日渡橋。湯本川で遮られ終点となります。

かつて選鉱場とホッパーがあったそうですが、今は常磐共同ガス(株)の敷地となっています。

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