工部省鉄道寮釜石鉄道

◆2014年9月20日(土)撮影
 かつて、JR釜石線陸中大橋〜釜石間に沿って鉄道が敷設されていました。しかも、新橋駅〜横浜駅(現、桜木町駅)間鉄道、京都駅〜神戸駅間鉄道に続く日本で3番目として1876(明治9)年に着工、1880(明治13)年に完成した古い路線で、工部省鉄道寮釜石鉄道と言いました。

 大橋にある鉱山から鈴子の官営釜石製鉄所までを結ぶ本線18.1kmは現在の国道283号線に相当し、小川支線は4.9kmで、高炉用燃料としての木炭を運搬する目的で建設され、小川山(わらびの)にあった小川製炭所から釜石製鉄所まで運搬、そして工場支線3.3kmからなる計26.3kmであった。

 しかし、1880(明治13)年12月9日の小川製炭所の火災のため製鉄所は休止し、遊休施設となった鉄道の有効活用のため1882(明治15)年3月1日に乗客と貨物の取り扱いも開始し、「おがわ」駅が設置されましたが、1882(明治15)年12月には製鉄所が廃業。燃料となる木炭の不足と、代替となるコークス使用のめどが立たなかったのが原因といわれる。それに伴い鉄道も同12月で廃止され、機関車とレールは関西の阪堺鉄道(現在の南海鉄道)に売却され、敷地と橋梁は県に移管され、わずか3年あまりでその歴史を終えました。

 その後、本線に当たる大橋〜釜石間が1894(明治27)年に釜石鉱山馬車鉄道として再建されて、いくつもの変遷を経て1965(昭和40)年まで運行されましたが、小川支線はそのまま再建されることはありませんでした。

 現在ではその遺構は、本線では国道283号線の拡幅工事などによってほとんど残されていませんが、小川支線にレンガ造りの橋梁が2つ残されています。


http://www.city.kamaishi.iwate.jp/kyoudo/column/column-tanbou2.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%9C%E7%9F%B3%E9%89%B1%E5%B1%B1%E9%89%84%E9%81%93

平成14年の地形図(抜粋)

「この地図は、国土地理院発行の2.5万分の1地形図(小佐野)(図歴H13、H14.7.1発行)を使用したものである。」
国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html
@分岐点

現在のJR釜石線小佐野駅。この付近で本線と支線は分岐していたものと考えられます。

小佐野駅の釜石方付近。左が国道283号線、右が市道。支線の路線跡はそのまま現在の市道に転用されたとの話ですが、なにぶん100年以上前の路線なので、確証はありません。

この付近には踏切があります。

左の線路がJR釜石線。雰囲気的にもこの付近が分岐点かなと個人的な感想です。
A第1橋梁

釜石側
一見すると何もないように見えます。

小川側
路線跡のような雰囲気が漂っています。

ここにいきなり案内板が。つまりこの真下に目指す橋梁があるのです。

対岸に移ってみると、確かに橋梁があります。

明治期に多用されたイギリス積みのレンガです。上の色違いのレンガは後の時代のものかもしれませんが、下の部分は間違いなく130年以上も前のもの。
B第2橋梁

先ほどの第1橋梁は川の対岸にあるので、間近で見ることは出来ませんが、この第2橋梁は手で触ることが出来ます。

こちらも見事なイギリス積みのレンガ。何度も言いますが130年以上も前のものです。

130年以上も風雪に耐えた風格が漂っています。

アーチ橋梁の碑と追分(分かれ道の目印)の碑。

アーチ橋梁の碑文。
アーチ橋梁
 明治政府の工部省によって建設された官営釜石鉱山は、原燃料輸送のため、鈴子・大橋間と、途中わかれて小佐野・小川間の鉄道をわが国では三番目として明治九(一八七六)年に着工し同十三(一八八〇)年に完成しました。
 このアーチ橋梁は小川山(わらび野)製炭所に至る四、九キロメートルの間に四か所の橋梁がかけられたうちの一か所であり、英人技師三名と毛利重輔によって外国の技法でつくられたものです。
 この橋梁には三十五ポンド(十七キログラム)のレールが敷かれ英国マンチェスター製の機関車が走りました。現在は道路として使用されていますが、この種の橋梁で残っているものでは、わが国で一ばん古いといわれています。

昭和六十一年三月
釜石市教育委員会
武山利一撰並書

廃校になった小川小学校がすぐそばにあります。現在は東日本大震災の仮設住宅地となっています。
C鉱業所前
どうやら路線はこの先を進むようですが、明確な終着点は不明です。この地点はバス停に「鉱業所前」とありましたが、小川支線時代とは無関係かもしれません。

釜石方面
鉄道由来の緩やかなカーブが印象的です。

小川方面

「鉱業所前」のバス停

この橋の先には何があるのか不明です。

支線によって流れている小川。

道路脇にあった謎の遺構。鉱石を貨物に乗せて積み出すためのホッパーのようにも見えますが、不明です。

使われなくなってから相当な時間が過ぎているようです。
D終点付近(?)
明確な終点は不明ですが、支線の長さが4.9kmなので距離的にもどうやらこの付近まで路線が延びていたようです。

現在、日向ダムが建設されています。

ダム上より釜石方面を俯瞰。この付近まで路線が伸びていた可能性があります。

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