(概要) 武蔵野線(むさしのせん)は、神奈川県横浜市鶴見区の鶴見駅から千葉県船橋市の西船橋駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)および日本貨物鉄道(JR貨物)の鉄道路線(幹線)であり、「東京メガループ」の一つである。 実質上、東北・上越方面と東海道方面を結ぶ山手貨物線のバイパス路線として建設、管理されている路線のため、武蔵野線北朝霞・新座方面と東北本線与野・大宮方面を結ぶ線路(武蔵野線大宮支線)が直進線路となっている。 ちなみに、武蔵野線開通によって山手貨物線には余裕ができ、埼京線や湘南新宿ラインの2系統が乗り入れるなど貨物線の旅客使用が行われている。 武蔵野線の特徴としては、 ・高規格路線として建設されたため、全線を通じて踏切がなく、カーブも緩やかである。(貨物線のため) ・沿線にはベッドタウンが多い。(大体が武蔵野線開業後にできたもの) ・複数の長大トンネルが存在する が挙げられる。 貨物輸送に関しては、起点の鶴見で東海道本線(東海道貨物線)と接続し、西浦和駅にて東北本線(東北貨物線)方面に直進し与野駅にて東北本線(東北貨物線)と接続するほか、新小平駅、武蔵浦和駅、南流山駅では短絡線を介して中央本線、東北本線、常磐線とそれぞれ接続しており、線内には梶ヶ谷貨物ターミナル駅、新座貨物ターミナル駅、越谷貨物ターミナル駅の3つの貨物専用ターミナル駅が設置され、また西船橋駅から京葉線を介して千葉貨物駅とも直結し、首都圏鉄道貨物輸送の大動脈となっている。 (歴史) 武蔵野線は、もともとは東海道本線方面と東北本線方面を結ぶ山手貨物線(1925(大正14)年3月28日完成)の代替バイパス貨物線のための「東京外環貨物線」として計画され、1927(昭和2)年の鉄道敷設法に入れられたが、第二次世界大戦などの影響で計画が凍結された。戦後、山手貨物線での貨物列車本数が増加して輸送力が限界となったことから建設の気運が一気に高まり、1964(昭和39)年7月には武蔵野線のルートが決定、同年には日本鉄道建設公団によって工事が始まった。その最中の1967(昭和42)年8月8日に新宿駅構内で起った貨物列車(米軍燃料輸送列車)の転覆炎上事故が発生したことにより完成が急がれた。日本有数の繁華街に危険物を大量に積載した貨物が輸送され、万が一事故やテロの標的(この時代は学生運動が盛んな時代)にされて大惨事が発生する危険性が大きかったのである。 1973(昭和48)年4月1日に府中本町駅〜新松戸駅間、与野駅〜西浦和駅間などが開業し、旅客線および貨物線の営業を開始した。旅客営業については、開業当初は貨物列車の合間の住民への見返り運転であり、昼間は40分間隔、ラッシュ時でも15分間隔での運転だった。だが1970年代後半に移ると貨物列車は拠点間集中輸送に重点を置くようになり、また貨物列車自体の削減からダイヤに余裕が生まれたことや沿線開発に伴う人口増から、次第に旅客列車も増発された。 |
鶴見駅にあるゼロキロポスト(2014年12月27日(土)撮影) |
府中本町駅ホーム北側より撮影した南武線(左)と武蔵野線(右)の分岐点。 (2018年12月30日(日)撮影) |
駅名・信号場名 | 駅間 営業 キロ |
累計営業 キロ |
所在地 | 開業日 | ||||
府中 本町 から |
鶴見 から |
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(漢字表記) | (よみ) | |||||||
貨 物 専 用 |
鶴見駅 | つるみ | - | - | 0.0 | 神 奈 川 県 |
横浜市 鶴見区 |
1872年10月15日 (旧暦:明治5年9月12日) ※新橋〜横浜間の駅として |
新鶴見信号場 | しんつるみ | 3.9 | - | 3.9 | 1929(昭和4)年8月21日 | |||
(貨)梶ヶ谷貨物ターミナル駅 | かじがや | 8.8 | - | 12.7 | 川崎市 宮前区 |
1976(昭和51)年3月1日 | ||
旅 客 営 業 区 間 |
府中本町駅 | ふちゅうほんまち | 16.1 | 0.0 | 28.8 | 東 京 都 |
府中市 | 1928(昭和3)年12月11日 ※南武線の駅として |
北府中駅 | きたふちゅう | 1.7 | 1.7 | 30.5 | 1956(昭和31)年9月1日 ※中央本線の駅として |
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西国分寺駅 | にしこくぶんじ | 2.2 | 3.9 | 32.7 | 国分寺市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
新小平駅 | しんこだいら | 3.5 | 7.4 | 36.2 | 小平市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
新秋津駅 | しんあきつ | 5.6 | 13.0 | 41.8 | 東村山市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
東所沢駅 | ひがしところざわ | 2.7 | 15.7 | 44.5 | 埼 玉 県 |
所沢市 | 1973(昭和48)年4月1日 | |
(貨)新座貨物ターミナル駅 | にいざ | 3.7 | 19.4 | 48.2 | 新座市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
新座駅 | にいざ | 0.3 | 19.7 | 48.5 | 1973(昭和48)年4月1日 | |||
北朝霞駅 | きたあさか | 3.1 | 22.8 | 51.6 | 朝霞市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
西浦和駅 | にしうらわ | 5.0 | 27.8 | 56.6 | さいたま市 桜区 |
1973(昭和48)年4月1日 | ||
武蔵浦和駅 | むさしうらわ | 2.0 | 29.8 | 58.6 | さいたま市 南区 |
1985(昭和60)年9月30日 | ||
南浦和駅 | みなみうらわ | 1.9 | 31.7 | 60.5 | 1961(昭和36)年7月1日 ※京浜東北線の駅として |
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東浦和駅 | ひがしうらわ | 3.7 | 35.4 | 64.2 | さいたま市 緑区 |
1973(昭和48)年4月1日 | ||
東川口駅 | ひがしかわぐち | 3.8 | 39.2 | 68.0 | 川口市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
南越谷駅 | みなみこしがや | 4.3 | 43.5 | 72.3 | 越谷市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
(貨)越谷貨物ターミナル駅 | こしがや | 0.4 | 43.9 | 72.7 | 1973(昭和48)年10月1日 | |||
越谷レイクタウン駅 | こしがやれいくたうん | 2.4 | 46.3 | 75.1 | 2008(平成20)年3月15日 | |||
吉川駅 | よしかわ | 1.9 | 48.2 | 77.0 | 吉川市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
吉川美南駅 | よしかわみなみ | 1.6 | 49.8 | 78.6 | 2012(平成24)年3月17日 | |||
新三郷駅 | しんみさと | 1.5 | 51.3 | 80.1 | 三郷市 | 1985(昭和60)年3月14日 | ||
三郷駅 | みさと | 2.1 | 53.4 | 82.2 | 1973(昭和48)年4月1日 | |||
南流山駅 | みなみながれやま | 2.0 | 55.4 | 84.2 | 千 葉 県 |
流山市 | 1973(昭和48)年4月1日 | |
新松戸駅 | しんまつど | 2.1 | 57.5 | 86.3 | 松戸市 | 1973(昭和48)年4月1日 | ||
新八柱駅 | しんやはしら | 4.1 | 61.6 | 90.4 | 1978(昭和53)年10月2日 | |||
東松戸駅 | ひがしまつど | 2.4 | 64.0 | 92.8 | 1998(平成10)年3月14日 | |||
市川大野駅 | いちかわおおの | 1.9 | 65.9 | 94.7 | 市川市 | 1978(昭和53)年10月2日 | ||
船橋法典駅 | ふなばしほうてん | 3.0 | 68.9 | 97.7 | 船橋市 | 1978(昭和53)年10月2日 | ||
西船橋駅 | にしふなばし | 2.9 | 71.8 | 100.6 | 1958(昭和33)年11月10日 ※総武線の駅として |
年表 | |
1973(昭和48)年4月1日 | 武蔵野線 府中本町駅〜新松戸駅間 (57.5km) が開業(貨物営業は北府中駅〜南流山駅間 53.7kmのみ)。貨物支線 新小平駅〜国立駅間 (5.0km) 、新秋津駅〜日本国有鉄道線・西武鉄道株式会社線分界点間 (1.6km) 、西浦和駅〜与野駅間 (4.9km) 、南流山駅〜北小金駅間 (2.9km) 、南流山駅〜馬橋駅間 (3.7km) が開業。中央本線貨物支線(下河原線)北府中駅〜下河原駅間 (3.8km) が編入される。西国分寺駅・新小平駅・新秋津駅・東所沢駅・新座貨物ターミナル駅・新座駅・北朝霞駅・西浦和駅・東浦和駅・東川口駅・南越谷駅・越谷貨物ターミナル駅・吉川駅・三郷駅・南流山駅・新松戸駅が開業。田島信号場・別所信号場が開設。北府中駅・下河原駅の所属線区を中央本線から武蔵野線に変更。 |
1974(昭和49)年10月1日 | 武蔵野操車場が開設。 |
1976(昭和51)年3月1日 | 鶴見駅〜新鶴見操車場〜府中本町駅間 (28.8km) が延伸開業(貨物営業のみ)。梶ヶ谷貨物ターミナル駅〜尻手駅間 (10.3km) にも営業キロ設定。梶ヶ谷貨物ターミナル駅開業。府中本町駅〜北府中駅間 (1.7km) で貨物営業開始。 |
1973(昭和48)年9月20日 | 貨物支線 北府中駅〜下河原駅間 (3.8km) が廃止。下河原駅が廃止。 |
1978(昭和53)年10月2日 | 新松戸駅〜西船橋駅間 (14.3km) が延伸開業(旅客営業のみ)。新八柱駅・市川大野駅・船橋法典駅が開業。 |
1980(昭和55)年8月17日 | 浦和市田島(現在のさいたま市桜区田島)の西浦和駅付近の古タイヤ置き場付近から出火、タイヤ約30万本が焼ける。この火災の影響で高架橋が熱で激しく損傷し、1か月にわたり北朝霞駅〜西浦和駅間が不通となる。 |
1984(昭和59)年2月1日 | 新鶴見操車場が信号場に変更、新鶴見信号場となる。 |
1985(昭和60)年3月14日 | 新三郷駅が開業。 |
1985(昭和60)年9月30日 | 武蔵浦和駅が開業し、田島信号場が統合される。 |
1986(昭和61)年11月1日 | 武蔵野操車場が廃止。 |
1987(昭和62)年4月1日 | 国鉄分割民営化により、東日本旅客鉄道が継承。日本貨物鉄道が鶴見駅〜南流山駅間などの第2種鉄道事業者となる。梶ヶ谷貨物ターミナル駅〜尻手駅間 (10.3km) 、新秋津駅〜日本国有鉄道線西武鉄道株式会社線分界点 (1.6km) 間の営業キロ設定廃止。 |
1991(平成3)年10月12日 〜12月11日 |
台風21号の影響で新小平駅構内で地下水の噴出により線路およびホームが水没し、西国分寺駅〜新秋津駅間が不通になる。 |
1998(平成10)年3月14日 | 東松戸駅が開業。 |
2000(平成12)年12月2日 | 日本貨物鉄道の第二種鉄道事業(南流山駅〜西船橋駅間 16.4km)が開業。 |
2003(平成15)年上旬 | 自動進路制御装置が各駅で順次使用開始。 |
2008(平成20)年3月15日 | 越谷レイクタウン駅が開業。 |
2010(平成22)年12月4日 | 大宮駅発着の「むさしの号」が定期列車化、同時に西船橋方面発着の「しもうさ号」が運転開始。 |
2012(平成24)年1月22日 | 東京圏輸送管理システム (ATOS) の使用開始。 |
2012(平成24)年3月17日 | 吉川美南駅が開業。 |