この区間は、1901(明治34)年に官設鉄道「奥羽北線」の一部として開通した全長3.9kmの区間で、旧線には七座(ななくら)信号場という信号場も設置されていた。 この区間は曲線区間が連続する難所であったため、直線化と複線化による速度アップと輸送力増強、または将来の電化をにらんだ工事が行われた。かくして1971(昭和46)年8月5日に完成・開通したきみまち坂トンネルと太平山トンネルをはじめとした新線に切り替えられ、従来の4つの隧道と七座信号場をはじめとした路線は旧線として廃止された。 (廃墟データ) (↑二ッ井・福島方面(上り)) 二ッ井駅 第4小繋隧道(175m) 第3小繋隧道(155m) 第2小繋隧道(141m) 七座(ななくら)信号場 第1小繋隧道(243m) 前山駅 (↓前山・青森方面(下り)) |
昭和41年発行の地形図(抜粋) 旧線切り替え前。曲線区間が連続しているのがわかります。 「この地図は、国土地理院発行の5分の1地形図(鷹巣)(図歴:S38、S41.4.30発行)+5万分の1地形図(雫石)(図歴:S26、S27.2.28発行)を使用したものである。」 国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html |
昭和49年発行の地形図(抜粋) 旧線切り替え後。旧線は地図上では道と表記されています。 「この地図は、国土地理院発行の5万分の1地形図(鷹巣)(図歴:S47、S49.11.30発行)を使用したものである。」 国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html |
平成4年発行の地形図(抜粋) 「この地図は、国土地理院発行の5万分の1地形図(鷹巣)(図歴:H3、H4.2.1発行)を使用したものである。」 国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html |
「この地図は、国土地理院発行の2.5万分の1地形図(二ッ井)(図歴:H22、H23.1.1発行)を使用したものである。」 国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html |
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@旧線と新線の分岐点 新旧地形図を見比べると、どうやらこの踏切の二ッ井側で旧線は現在の新線から分かれたものと思われます。 |
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二ッ井踏切 |
二ッ井側を撮影。路線の左側の茂みが旧線部分と思われます。 |
踏切の手前には旧線と思われる空き地が広がっていました。 |
反対側。 この先旧線跡は国道の高架用地に転用され消滅しています。 手前左にあるのは鉄道用地を示す「鉄道用地杭」。 |
1975年の空中写真。旧線と新線がはっきりとわかります。 |
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A藤琴川と第4小繋隧道 | |
二ッ井側 左が旧国道7号の「琴音橋」で、右が現在の国道7号の「きみまち大橋」で、旧線はこの中間を通っていましたが、現在では橋の痕跡は見あたりませんでした。 |
前山側 第4小繋隧道がそのまま残されていました。 |
トンネルの天井を見ると、蒸気機関車時代のすすで黒くなっていました。 |
反対側から光が見えましたので閉塞されていないようですが、一部崩れているように見えます。 |
旧国道の「琴音橋」。 |
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B第4小繋隧道と第3小繋隧道の中間点 | |
第4小繋隧道の前山側。現在は公園の一部となっています。 |
ここに奥羽本線が走っていたことを示す表示板がありました。 |
第4小繋隧道の反対側には第3小繋隧道があったはずですが坑口が消滅しています。この第3小繋隧道の前山側は後述する国道7号線のきみまちトンネルへの一部転用と公園化によって消滅したようです。 |
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「この地図は、国土地理院発行の2.5万分の1地形図(二ッ井)(図歴:H22、H23.1.1発行)+2.5万分の1地形図(鷹巣西部)(図歴:H10、H10.7.18発行)を使用したものである。」 国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html |
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Cきみまちトンネル(第3小繋隧道前山側) 旧線は第3小繋隧道を通っていましたが、現在ではその面影はありません。国道7号バイパス工事の時にきみまちトンネルが掘られ、第3小繋隧道坑口が消滅したと思われます。 |
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右側が国道7号バイパスになっているきみまちトンネルで、左側の空き地が旧線跡のようです。 |
前山側 左の道路が現在の国道7号線、真ん中が旧線跡、右の道路が旧国道7号です。 |
前山側。この先は新旧国道7号線の合流地点で、旧線跡はこの道路を交差していたものと思われます。 |
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D新旧国道7号線の合流点 | |
左の信号で新旧国道が合流し、旧線跡は旧国道に接する形で赤線で示した部分を通っていたようです。 |
旧線跡は国道7号から分かれますが、その跡には現在ではコンビニエンスストアの駐車場や建物が建っています。 |
E第2小繋隧道二ッ井側 | |
周辺より高い位置にあり、また藪が多かったので、少々難儀しました。時間の関係とトンネルからしみ出ている地下水でぬかるんでいましたのでこれ以上の接近は出来ませんでした。 |
所々レンガの崩落が始まっていました。 |
二ッ井側を撮影。この先緩やかに下っていたであろう築堤は切り崩され、自動車学校(どうやら廃校)になっていました。 |
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F第2小繋隧道前山側 | |
こちらも時間の関係で接近をあきらめ、併走する国道から望遠撮影しました。 |
一見すると崩落しているようには見えませんでした。 |
G七座(ななくら)信号場 開設:1965(昭和40)年10月1日 廃止:1971(昭和46)年8月5日 6年間しか使用されなかった信号場ですが、その筋ではちょっとした有名な場所です。 |
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小繋橋という橋があります。その下を覗くと・・・ |
なにやらホームみたいなものがありますが、これが七座(ななくら)信号場です。 |
下へ下る途中でわき水の汲み場がありました。 |
七座信号場 |
信号場なので、車両1両弱の長さしかありません。 |
おそらく「1965-9」と読むことが出来ます。 信号場開設は1965年10月ですが、廃止は1971年なのでわずか6年間しか使われなかった信号場となります。 ちなみに、信号場の名前の由来になった七座村は1955(昭和30)年4月1日は鷹巣町に合併して消滅し、現在は北秋田市となっています。しかし、信号場開設は村が無くなって10年後なので、名称の由来には謎が残ります。 |
信号場に隣接する小橋梁。 |
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二ッ井方向。この先、先ほどのF第2小繋隧道前山側に繋がります。 |
前山方向。この先には第1小繋隧道がありますが、情報によると坑口は埋められたりして消滅しているとのことでした。 |
小繋橋より、二ッ井方向。 |
小繋橋より、前山方向。 |
「この地図は、国土地理院発行の2.5万分の1地形図(鷹巣西部)(図歴:H10、H10.7.18発行)を使用したものである。」 国土地理院発行地形図の引用について http://www.gsi.go.jp/LAW/2930-meizi.html |
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H第1小繋隧道前山側 | |
上に写っているのが北秋田市営薬師山スキー場で、一見すると何の変哲もない風景ですが・・・ |
よく近づいてみてみると坑口が見えました。どうやら畜舎として再利用されているようです。 |
北秋田市営ヒュッテ。薬師山スキー場開設の冬期だけの営業のようです。 |
この先、旧線は一部道路化されています。 |
I太平トンネル前山口 | |
旧線跡であるこの道路はこの先、左へカーブしますが、旧線はこのまま直進します。 この道路は周りや、その先にある太平山トンネルより高い位置にあり、鉄道路線としては不自然です。これは想像ですが、道路化やこの先(J)の跨線橋を設置するときにかさ上げされた可能性があります。 |
太平山トンネルの前山口です。 |
J合流点 | |
太平山トンネルすぐ近くの跨線橋より撮影。右手になにやら旧線跡らしい空き地が見えます。 |
地形図や周囲の状況から想像すると、どうやらこのように旧線がのびていたものと思われます。 |