(概要) 高崎線(たかさきせん)は、埼玉県さいたま市大宮区の大宮駅から群馬県高崎市の高崎駅までを結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(幹線)である。 (歴史) 日本初の私鉄である日本鉄道の第1期線として、1883(明治16)年に上野〜熊谷間で仮営業を開始したのが始まりである。立案当初、上野〜高崎間の路線には、王子〜赤羽〜大宮〜鴻巣〜熊谷〜高崎という英国人技師ボイルの案と、千住〜岩槻〜忍〜熊谷〜高崎という米国人技師クロフォードの案の二案があった。当時の鉄道局長官井上勝がボイル案を採用し、現在の路線が建設された。開業時の開設駅は上野、王子、浦和、上尾、鴻巣、熊谷で現在は中距離列車の停車しない王子も含まれている。翌1884(明治17)年には高崎、前橋まで延長され、全通した。高崎まで開通した同年6月25日には、明治天皇臨席のもと上野駅で開通式が行われ、この際に明治天皇は上野〜高崎間を往復乗車した。1894(明治27)年12月発行の「汽車汽船旅行案内」には、当線を「上野〜赤羽〜大宮〜高崎と経て直江津線に連絡し前橋まで至って両毛線に連絡する線」とし、中仙道線と案内している。 現在も上野を列車運行上の起点とし、さらに現在では別路線の両毛線の駅となっている前橋への直通列車も設定されているのは、当時の終着駅が前橋であることに由来する。ただし、この時の前橋駅は利根川の西岸、現在の新前橋駅付近にあった。この駅は、地元で内藤分停車場あるいは内藤ステーションと呼ばれていた。小山から両毛鉄道が西進し、現在の前橋駅まで開業すると同時に、日本鉄道も利根川を渡る線路を敷設して現在の前橋駅まで延伸開業し、旧前橋駅は廃止された。その後、新前橋駅は1921(大正10)年の上越南線開業で分岐駅として開業している。 なお、同社初の路線として、日本初の官営ではない民営鉄道として、この路線が開業した背景には、当時の日本の貿易赤字解消の外貨獲得と殖産興業として当時の一大輸出品目であった生糸や絹織物を、養蚕業と製糸業の盛んな群馬県から貿易港の横浜港まで製品を運ぶ手段が必要とされたことにある。また、同線が当時東西の両京を結ぶ主要鉄道と位置付けられた中山道鉄道(後に両京を結ぶ鉄道の岐阜以東は東海道経由へと変更された)の第1区を形成する計画でもあった。しかし、政府財政の窮乏のために建設が遅れ、株式会社である日本鉄道が代わって建設したのである。 第2期線である東北本線を分岐するため大宮駅が開設されたのは、さらにその翌年の1885(明治18)年のことである。 1906(明治39)年には、日本鉄道が鉄道国有法により買収・国有化され、本路線も官設鉄道に編入された。大宮〜高崎間が高崎線として分離されたのは、3年後の1909(明治42)年の国有鉄道線路名称設定時である。 東北新幹線建設の際、地元住民への見返りとして建設された通勤新線(現在の埼京線が通る路線で、東北本線の支線:赤羽駅〜武蔵浦和駅〜大宮駅)は、宮原から高崎線へ乗り入れる計画があり、一部工事も行われたが、埼京線の車両基地候補であった戸田市周辺の用地買収が難航、そのため当初の乗入予定の高崎線沿線に車両基地を設置できるかを検討したものの断念。急遽川越線を電化することで沿線に川越電車区を設置し、埼京線を乗り入れさせることになったため、この計画は中止された。しかし、大宮〜宮原間に取得した乗り入れのための複々線化用地は、一部をのぞいて民営化後の現在も維持されている。また、上尾市はさいたま市との合併協議(その後、合併協議は中止)の際、これを利用した埼京線もしくは京浜東北線の上尾延伸を見返りとして要求していた。 |
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大宮駅11番線にある高崎線0キロポスト。 (2014年12月7日(日)撮影) |
川越線(左側)と高崎線(右側)の分岐点。 (2018年8月12日(日)車内より撮影) |
駅名 | 駅間 営業 キロ |
累計 営業 キロ |
所在地 | 開業年月日 | |||
(漢字表記) | (よみ) | ||||||
大宮駅 | おおみや | 1.6 | 0.0 | 埼 玉 県 |
さい たま 市 |
大宮区 | 1885(明治18)年3月16日 |
宮原駅 | みやはら | 4.0 | 4.0 | 北区 | 1948(昭和23)年7月15日 | ||
上尾駅 | あげお | 4.2 | 8.2 | 上尾市 | 1883(明治16)年7月28日 | ||
北上尾駅 | きたあげお | 1.7 | 9.9 | 1988(昭和63)年12月17日 | |||
桶川駅 | おけがわ | 1.9 | 11.8 | 桶川市 | 1885(明治18)年3月1日 | ||
北本駅 | きたもと | 4.6 | 16.4 | 北本市 | 1918(大正7)年8月16日 | ||
鴻巣駅 | こうのす | 3.6 | 20.0 | 鴻巣市 | 1883(明治16)年7月28日 | ||
北鴻巣駅 | きたこうのす | 4.3 | 24.3 | 1984(昭和59)年11月3日 | |||
吹上駅 | ふきあげ | 3.0 | 27.3 | 1885(明治18)年3月1日 | |||
行田駅 | ぎょうだ | 2.3 | 29.6 | 行田市 | 1966(昭和41)年7月1日 | ||
熊谷駅 | くまがや | 4.8 | 34.4 | 熊谷市 | 1883(明治16)年7月28日 | ||
(貨)熊谷貨物ターミナル駅 | くまがやかもつたーみなる | 4.9 | 39.3 | 1979(昭和54)年10月1日 | |||
籠原駅 | かごはら | 1.7 | 41.0 | 1909(明治42)年12月16日 | |||
深谷駅 | ふかや | 4.8 | 45.8 | 深谷市 | 1883(明治16)年10月21日 | ||
岡部駅 | おかべ | 4.3 | 50.1 | 1909(明治42)年12月16日 | |||
本庄駅 | ほんじょう | 5.6 | 55.7 | 本庄市 | 1883(明治16)年10月21日 | ||
神保原駅 | じんぼはら | 4.0 | 59.7 | 児玉郡 上里町 |
1897(明治30)年11月15日 | ||
新町駅 | しんまち | 4.5 | 64.2 | 群 馬 県 |
高崎市 | 1883(明治16)年12月27日 | |
(北藤岡駅) | 2.5 | 66.7 | 藤岡市 | ||||
倉賀野駅 | くらがの | 3.6 | 70.3 | 高崎市 | 1894(明治27)年5月1日 | ||
(貨)高崎操車場 | たかさきそうしゃじょう | 1.9 | 72.2 | 1943(昭和18)年10月1日 | |||
高崎駅 | たかさき | 2.5 | 74.7 | 1884(明治17)年5月1日 |
年表 | |
1883(明治16)年7月28日 | 【開業】日本鉄道 上野〜熊谷 【駅新設】上野、王子、浦和、上尾、鴻巣、熊谷 |
1883(明治16)年10月21日 | 【延伸開業】熊谷〜本庄 【駅新設】深谷、本庄 |
1883(明治16)年12月27日 | 【延伸開業】本庄〜新町 【駅新設】新町 |
1884(明治17)年5月1日 | 【延伸開業】新町〜高崎 【駅新設】高崎 |
1884(明治17)年8月20日 | 【延伸開業・全通】高崎〜前橋 【駅新設】前橋 |
1885(明治18)年3月1日 | 【駅新設】赤羽、桶川、吹上 |
1885(明治18)年3月16日 | 【駅新設】大宮 |
1889(明治22)年11月 | 両毛鉄道、前橋まで開業。両毛鉄道に接続するため、前橋駅を移設 |
1894(明治27)年5月1日 | 【駅新設】倉賀野 |
1897(明治30)年11月15日 | 【駅新設】神保原 |
1906(明治39)年11月1日 | 【買収・国有化】日本鉄道 → 官設鉄道 |
1908(明治41)年5月1日 | 【信号所新設】加茂宮 |
1909(明治42)年10月12日 | 【国有鉄道線路名称制定】高崎線 大宮〜高崎(この区間を分離。上野〜大宮間は東北本線、高崎〜前橋間は両毛線に編入) |
1909(明治42)年12月16日 | 【駅新設】籠原、岡部 |
1918(大正7)年8月16日 | 【信号所新設】本宿 |
1922(大正11)年4月1日 | 【信号所 → 信号場】加茂宮、本宿 |
1927(昭和2)年8月9日 | 【複線化】加茂宮(信)〜上尾 |
1927(昭和2)年10月15日 | 【複線化】上尾〜桶川 |
1927(昭和2)年11月20日 | 【複線化】大宮〜加茂宮(信) |
1928(昭和3)年2月1日 | 【複線化】桶川〜本宿(信) |
1928(昭和3)年3月30日 | 【複線化】鴻巣〜吹上 |
1928(昭和3)年5月1日 | 【複線化】倉賀野〜高崎 |
1928(昭和3)年6月1日 | 【複線化】本宿(信)〜鴻巣 |
1928(昭和3)年7月1日 | 【複線化】吹上〜熊谷 |
1928(昭和3)年8月1日 | 【信号所 → 駅・改称】本宿 → 北本宿 |
1928(昭和3)年12月26日 | 【複線化】深谷〜岡部 |
1929(昭和4)年5月1日 | 【複線化】熊谷〜籠原 |
1929(昭和4)年7月10日 | 【複線化】籠原〜深谷 |
1929(昭和4)年8月6日 | 【複線化】本庄〜神保原 |
1930(昭和5)年5月16日 | 【複線化】神保原〜新町 |
1930(昭和5)年6月12日 | 【複線化】岡部〜本庄 |
1930(昭和5)年10月15日 | 【仮信号所新設】小野(八高北線の分岐点) |
1930(昭和5)年10月16日 | 【複線化】新町〜倉賀野 |
1931(昭和6)年7月1日 | 【仮信号所 → 信号場】小野 |
1943(昭和18)年10月1日 | 【操車場新設】高崎 |
1947(昭和22)年1月22日 | 【信号場廃止】加茂宮 |
1947(昭和22)年4月1日 | 【電化】高崎(操)〜高崎(〜水上) |
1948(昭和23)年7月15日 | 【駅新設】宮原(旧加茂宮信号場の位置) |
1952(昭和27)年4月1日 | 【電化】大宮〜高崎(操) |
1961(昭和36)年2月21日 | 【信号場廃止】小野(八高線北藤岡駅構内に併合) |
1961(昭和36)年3月20日 | 【駅名改称】北本宿 → 北本 |
1966(昭和41)年7月1日 | 【駅新設】行田 |
1979(昭和54)年10月1日 | 【駅新設】(貨)熊谷貨物ターミナル |
1982(昭和57)年11月15日 | 上越新幹線開業 |
1984(昭和59)年11月3日 | 【駅新設】北鴻巣 |
1987(昭和62)年4月1日 | 【承継】東日本旅客鉄道(第1種)・日本貨物鉄道(第2種) |
1988(昭和63)年12月17日 | 【駅新設】北上尾 |
1997(平成9)年10月1日 | 長野新幹線開業。在来線特急「あさま」・「白山」廃止 |
2001(平成13)年9月1日 | E231系電車が高崎線で営業運転開始。 |
2001(平成13)年12月1日 | 湘南新宿ラインとして一部列車が東海道線へ直通運転開始。 |
2004(平成16)年6月1日 | 高崎運転所を高崎車両センターへ改組。 |
2004(平成16)年12月19日 | 大宮〜神保原間に東京圏輸送管理システム (ATOS) 導入。 |
2005(平成17)年12月10日 | 新前橋電車区検修部門を高崎車両センターと統合。乗務員区を高崎運輸区・新前橋運輸区に改組。 |
2012(平成24)年9月1日 | 211系電車の置き換えを目的に、E233系電車が営業運転開始。 |