(概要) 田沢湖線(たざわこせん)は、秋田県大仙市の大曲駅から岩手県盛岡市の盛岡駅を結ぶ、東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)。 地方交通線とはいえ、東北本線沿線から秋田方面へは重要なリレー的路線の需要もあるため、1996年から1年間運休して軌間を新幹線と同じ1435mmの標準軌に拡幅する工事を行い、翌年にミニ新幹線である秋田新幹線のルートとして東京駅からの直通を可能にした。全線が単線であり、上下の秋田新幹線「こまち」が途中の駅や信号場で行き違いを行う光景が見られる。 |
田沢湖線のゼロキロ標。8番ホームと9番ホームの大曲側にある。 (2012年8月18日(土)撮影) |
(歴史) ・軽便鉄道時代 盛岡と大曲を結ぶ横断線として軽便鉄道法により計画された路線で、盛岡側からは橋場軽便線として1922(大正11)年に盛岡〜橋場(橋場は休止扱い)間が、大曲側からは生保内軽便線として1923(大正12)年に大曲〜生保内(現在の田沢湖)間が開業した。なお、1922年に軽便鉄道法の廃止により、それぞれ橋場線、生保内線と改称されている。 ・全通の試みと戦争 昭和に入り、橋場〜生保内間が生橋線として着工したが、生保内〜志度内(現在の志度内信号所付近)の路線が完成した段階で日中戦争激化のため建設は休止。さらに1944(昭和19)年には橋場線の雫石〜橋場間が不要不急線に指定されて休止。同区間のレールは撤去されて、軍事的に重要な路線と位置づけられていた山田線のレール交換用に転用された。 ・全通 戦後再び、生保内線、橋場線を結ぶ生橋線建設の機運が高まり、生橋線のルートは、橋場〜生保内間から休止した雫石〜橋場間の途中に新駅赤渕を新設し、赤渕から志度内を結んで生保内にいたる最短ルートと変更になり、橋場駅は実質放棄された。1966(昭和41)年に全通し、名称も田沢湖線と改称された。 ・秋田新幹線開業 しばらくの間は地方ローカル路線であったが、1982(昭和57)年の東北新幹線盛岡開業に伴って、首都圏から秋田方面へ向かう連絡線として重要性が増し、新幹線接続特急「たざわ」(盛岡〜秋田間)の運行が始まった。 さらに、盛岡〜秋田間をミニ新幹線規格として、盛岡で乗り継ぎを不要して直通で東京〜秋田を新幹線で結ぶ計画が浮上し、この田沢湖線は秋田新幹線の一部として約1年間の改軌工事(1067mmから1435mm)などの新幹線化工事が行なわれ、1997(平成9)年に秋田新幹線が開通。新幹線「こまち」が運行を開始した。 |
盛岡駅の北側にある跨線橋から撮影した、田沢湖線(左)、IGRいわて銀河鉄道線(旧東北本線)(中央)、山田線(右)の分岐点。 (2015年3月29日(日)撮影) |
駅名 | 駅間 営業 キロ |
累計 営業 キロ |
所在地 | 開業日 | |||
(漢字表記) | (よみ) | (盛岡 起点) |
(大曲 起点) |
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盛岡駅 | もりおか | - | 0.0 | 75.6 | 岩 手 県 |
盛岡市 | 1890(明治23)年11月1日 ※東北本線の駅として |
前潟駅 | まえがた | 3.4 | 3.4 | 72.2 | 2023(令和5)年3月18日 | ||
大釜駅 | おおかま | 2.6 | 6.0 | 69.6 | 滝沢市 | 1921(大正10)年6月25日 | |
小岩井駅 | こいわい | 4.5 | 10.5 | 65.1 | 1921(大正10)年6月25日 | ||
雫石駅 | しずくいし | 5.5 | 16.0 | 59.6 | 岩手郡 雫石町 |
1921(大正10)年6月25日 | |
春木場駅 | はるきば | 2.7 | 18.7 | 56.9 | 1964(昭和39)年9月10日 | ||
赤渕駅 | あかぶち | 3.3 | 22.0 | 53.6 | 1964(昭和39)年9月10日 | ||
(橋場駅) | はしば | (7.7) | (29.7) | - | 1921(大正10)年6月25日 (※1944(昭和19)年10月1日に休止。 |
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(雫石駅より) | - | ||||||
(大地沢信号場) | おおちざわしんごうじょう | 6.6 | 28.6 | 47.0 | 1966(昭和41)年10月20日 | ||
(志度内信号場) | しどないしんごうじょう | 5.8 | 34.4 | 41.2 | 秋 田 県 |
仙北市 | 1966(昭和41)年10月20日 |
田沢湖駅 | たざわこ | 18.1 | 40.1 | 35.5 | 1923(大正12)年8月31日 | ||
刺巻駅 | さしまき | 4.3 | 44.4 | 31.2 | 1923(大正12)年8月31日 | ||
神代駅 | じんだい | 8.4 | 52.8 | 22.8 | 1921(大正10)年12月11日 | ||
生田駅 | しょうでん | 2.5 | 55.3 | 20.3 | 1955(昭和30)年7月10日 | ||
角館駅 | かくのだて | 3.5 | 58.8 | 16.8 | 1921(大正10)年7月30日 | ||
鶯野駅 | うぐいすの | 2.8 | 61.6 | 14.0 | 大仙市 | 1965(昭和40)年11月21日 | |
羽後長野駅 | うごながの | 3.0 | 64.6 | 11.0 | 1921(大正10)年7月30日 | ||
鑓見内駅 | やりみない | 3.3 | 67.9 | 7.7 | 1965(昭和40)年4月1日 | ||
羽後四ツ屋駅 | うごよつや | 2.3 | 70.2 | 5.4 | 1921(大正10)年7月30日 | ||
北大曲駅 | きたおおまがり | 1.8 | 72.0 | 3.6 | 1965(昭和40)年11月21日 | ||
大曲駅 | おおまがり | 3.6 | 75.6 | 0.0 | 1904(明治37)年12月21日 ※奥羽本線の駅として |
橋場線(盛岡〜橋場間) | |
1921(大正10)年6月25日 | 【開業】橋場軽便線 盛岡〜雫石(16.0km) 【駅新設】大釜、小岩井、雫石 |
1922(大正11)年7月15日 | 【延伸開業】雫石〜橋場(7.7km) 【駅新設】橋場 |
1922(大正11)年9月2日 | 【線名改称】橋場線 |
1944(昭和19)年10月1日 | 【一部休止】雫石〜橋場(-7.7km) 【駅休止】橋場 |
1964(昭和39)年9月10日 | 【延伸開業】雫石〜赤渕(6.0km)(生橋線が完成し橋場線に編入。雫石〜赤渕は旅客営業のみ) 【駅新設】春木場、赤渕 |
生保内線(大曲〜生保内(田沢湖)間) | |
1921(大正10)年7月30日 | 【開業】生保内軽便線 大曲〜角館(16.8km) 【駅新設】羽後四ツ屋、羽後長野、角館 |
1921(大正10)年12月11日 | 【延伸開業】角館〜神代(6.0km) 【駅新設】神代 |
1922(大正11)年9月2日 | 【線名改称】生保内線 |
1923(大正12)年8月31日 | 【延伸開業】神代〜生保内(12.7km) 【駅新設】刺巻、生保内 |
1955(昭和30)年7月10日 | 【駅新設】生田 |
1960(昭和35)年4月1日 | 【駅新設】鑓見内 |
1965(昭和40)年11月21日 | 【駅新設】北大曲、鶯野 |
1966(昭和41)年10月1日 | 【駅名改称】生保内→田沢湖 |
1966(昭和41)年10月19日 | 無煙化(C11) |
1966(昭和41)年10月20日 | 【編入】橋場線へ編入 |
田沢湖線 | |
1966(昭和41)年10月20日 | 【延伸開業】赤渕〜田沢湖(18.1km) 【線名改称】田沢湖線(生橋線赤渕〜田沢湖が完成し橋場線に生保内線とともに編入し改称) 【信号場新設】大地沢、志度内 |
1982(昭和57)年4月1日 | 【貨物営業廃止】全線 |
1982(昭和57)年11月15日 | 【電化】全線(交流50Hz・20kV) |
1987(昭和62)年4月1日 | 【承継】東日本旅客鉄道(第1種)大曲〜盛岡 (基本計画による。ただし実際には起終点変わらず)。 橋場線雫石〜橋場間は国鉄清算事業団へ承継。 |
1996(平成8)年3月30日 | 【休止】改軌工事のため休止。同線バス代行(JRバス東北盛岡支店・岩手観光バス・岩手県北バス・羽後交通)。なお、盛岡〜大曲間の直通便はJRバス東北が、各駅停車便は盛岡〜田沢湖間が岩手観光バス・岩手県北バスが、田沢湖〜大曲間は羽後交通が担当した。 |
1997(平成9)年3月22日 | 【改軌】1067mm→1435mm(全線) 「秋田新幹線」運行開始 |
2020(令和2)年7月8日 | この日までに、赤渕駅〜田沢湖駅間で、トンネル内携帯電話不通区間が解消。 |
2020(令和2)年11月15日 | 羽後長野駅〜鑓見内駅間の斉内川橋梁架替工事に伴い、一部列車が部分運休。 |
2021(令和3)年7月26日 | JR東日本と秋田県が赤渕駅〜田沢湖駅間約15 kmに設置する「新仙岩トンネル」整備を推進する覚書を締結。 |
2023(令和5)年3月18日 | 前潟駅を新設。 |
2023(令和5)年5月27日 | 盛岡駅〜雫石駅間においてICカード「Suica」の利用が可能となる。 |