(概要) 釧網本線(せんもうほんせん)は、北海道網走市の網走駅と釧路市の東釧路駅を結ぶ北海道旅客鉄道(JR北海道)の鉄道路線(地方交通線)である。 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』やJR線路名称公告では東釧路駅が起点とされているが、列車運行上は網走から釧路に向かう列車が下りとなっている。 (歴史) 太平洋沿岸の釧路とオホーツク海沿岸の網走を結ぶ目的で建設された路線で、網走などに流された囚人らの手で建設された。当初は網走と厚岸とを結ぶ計画であったが、釧路の発展が著しかったことから網走と釧路を結ぶ路線へと変更された。網走側は、網走本線(あばしりほんせん)の延長として1924(大正13)年から1929(昭和4)年にかけて札鶴(のちの札弦)まで開業し、釧路側は、釧網線として1927(昭和2)年から1930(昭和5)年にかけて川湯(のちの川湯温泉)まで開業した。このうち、標茶〜弟子屈(のちの摩周)間は、1896(明治29)年8月1日に営業休止(事実上の廃止)となった釧路鉄道の旧路盤を利用している。1931(昭和6)年9月20日に川湯〜札鶴間が開業し、全通。釧網線に網走本線の網走以東を編入し、現在の姿となった。 1987(昭和62)年4月1日の国鉄分割民営化後は、オホーツク海の流氷や小清水原生花園、それぞれ知床国立公園、阿寒摩周国立公園、釧路湿原国立公園に指定されている世界自然遺産知床半島、阿寒湖、摩周湖、釧路湿原等、沿線の豊富な観光資源を背景に観光路線として振興が図られており、新駅設置や駅名の改称が行われた。1989(平成元)年4月30日に標津線が廃止されてからは、現存する地方交通線の中で日本最東端にあたる。 |
東釧路駅構内にあるゼロキロポスト。 (2019年4月30日(火)東釧路駅にて撮影) 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』やJR線路名称公告では東釧路駅が起点とされているが、列車運行上は網走から釧路に向かう列車が下りとなっている。 |
東釧路駅ホームより望遠撮影した釧網本線(左)と根室本線(右)の分岐点。 (2019年4月30日(火)撮影) |
東釧路駅東側にある跨線橋より撮影した釧網本線(左)と根室本線(右)の分岐点。 (2019年4月30日(火)撮影) |
駅 番 号 |
駅名・信号場名 | 駅間 営業 キロ |
累計 営業 キロ |
所在地 | 開業日 | |||
(漢字表記) | (よみ) | |||||||
A69 | 網走駅 ※古レールについて | あばしり | - | 0.0 | オ ホ ー ツ ク 管 内 |
網走市 | 1912(大正元)年10月5日 ※石北本線の駅として |
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B79 | 桂台駅 | かつらだい | 1.4 | 1.4 | 1967(昭和42)年4月1日 | |||
B78 | 鱒浦駅 | ますうら | 4.8 | 6.2 | 1924(大正13)年11月15日 | |||
B77 | 藻琴駅 | もこと | 2.5 | 8.7 | 1924(大正13)年11月15日 | |||
B76 | 北浜駅 | きたはま | 2.8 | 11.5 | 1924(大正13)年11月15日 | |||
B75 | (臨)原生花園駅 | げんせいかえん | 5.4 | 16.9 | 斜 里 郡 |
小清水町 | 1987(昭和62)年7月1日 | |
B74 | 浜小清水駅 | はまこしみず | 3.2 | 20.1 | 1925(大正14)年11月10日 | |||
B73 | 止別駅 | やむべつ | 5.7 | 25.8 | 1925(大正14)年11月10日 | |||
B72 | 知床斜里駅 ※古レールについて | しれとこしゃり | 11.5 | 37.3 | 斜里町 | 1925(大正14)年11月10日 | ||
B71 | 中斜里駅 | なかしゃり | 4.6 | 41.9 | 1929(昭和4)年11月14日 | |||
B70 | 南斜里駅(廃止) | みなみしゃり | 2.2 | 44.1 | 1962(昭和37)年10月1日 廃止:2021(令和3)年3月13日 |
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B69 | 清里町駅 | きよさとちょう | 5.1 | 49.2 | 清里町 | 1929(昭和4)年11月14日 | ||
B68 | 札弦駅 | さっつる | 7.8 | 57.0 | 1929(昭和4)年11月14日 | |||
B67 | 緑駅 | みどり | 8.3 | 65.3 | 1931(昭和6)年9月20日 | |||
B66 | 川湯温泉駅 | かわゆおんせん | 14.5 | 79.8 | 釧 路 管 内 |
川 上 郡 |
弟子屈町 | 1930(昭和5)年8月20日 |
B65 | 美留和駅 | びるわ | 7.2 | 87.0 | 1930(昭和5)年8月20日 | |||
B64 | 摩周駅 ※古レールについて | ましゅう | 8.7 | 95.7 | 1929(昭和4)年8月15日 | |||
B63 | 南弟子屈駅(廃止) | みなみてしかが | 8.2 | 103.9 | 1929(昭和4)年8月15日 廃止:2020(令和2)年 3月14日 |
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B62 | 磯分内駅 | いそぶんない | 6.5 | 110.4 | 標茶町 | 1929(昭和4)年8月15日 | ||
B61 | 標茶駅 ※古レールについて | しべちゃ | 10.6 | 121.0 | 1927(昭和2)年9月15日 | |||
(B60) | 五十石駅(廃止) | ごじっこく | - | 129.5 | 1927(昭和2)年9月15日 廃止:2017(平成29)年3月4日 |
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B59 | 茅沼駅 | かやぬま | 13.9 | 134.9 | 1927(昭和2)年9月15日 | |||
B58 | 塘路駅 ※古レールについて | とうろ | 7.0 | 141.9 | 1927(昭和2)年9月15日 | |||
B57 | 細岡駅 | ほそおか | 7.2 | 149.1 | 釧 路 郡 |
釧路町 | 1927(昭和2)年9月15日 | |
B56 | 釧路湿原駅 | くしろしつげん | 2.4 | 151.5 | 1988(昭和63)年7月23日 | |||
B55 | 遠矢駅 | とおや | 7.3 | 158.8 | 1927(昭和2)年9月15日 | |||
B54 | 東釧路駅 | ひがしくしろ | 7.4 | 166.2 | 釧路市 | 1925(大正14)年3月16日 ※根室本線の駅として |
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※古レールについて |
年表 | |
網走本線 | |
1924(大正13)年11月15日 | 【延伸開業】網走本線網走(初代)〜北浜(7.2M≒11.6km) 【駅新設】鱒浦、藻琴、北浜 |
1925(大正14)年11月10日 | 【延伸開業】北浜〜斜里(16.0M≒25.7km) 【駅新設】古樋、止別、斜里 |
1929(昭和4)年11月14日 | 【延伸開業】斜里〜札鶴(12.2M≒19.6km) 【駅新設】猿間川、上斜里、札鶴 |
釧網線 | |
1927(昭和2)年9月15日 | 【開業】釧網線 釧路〜標茶(29.9M≒48.1km) (根室本線との分岐は別保信号場) 【駅開業】別保(信号場)、遠矢、細岡、塘路、茅沼、五十石、標茶 |
1928(昭和3)年11月11日 | 【信号場→駅・改称】別保→東釧路 【起点変更】釧路→東釧路(-1.8M≒-2.9km) |
1929(昭和4)年8月15日 | 【延伸開業】標茶〜弟子屈(15.7M≒25.3km) 【駅新設】磯分内、南弟子屈、弟子屈 |
1930(昭和5)年8月20日 | 【延伸開業】弟子屈〜川湯 (15.9km) 【駅新設】美留和、川湯 |
全通以後 | |
1931(昭和6)年9月20日 | 【延伸開業・全通】札鶴〜川湯 (22.8km) 【区間統合】釧網線 網走〜東釧路 (166.3km)(網走本線網走〜札鶴間を釧網線に編入) 【駅新設】上札鶴 |
1932(昭和7)年12月1日 | 【線路付替】網走駅移転。網走(初代)〜鱒浦廃止 (-6.3km)。網走(2代)〜鱒浦 (6.2km)開業。網走(初代)を浜網走に改称 |
1936(昭和11)年10月29日 | 【線名改称】釧網本線 |
1950(昭和25)年9月10日 | 【駅名改称】猿間川→中斜里 |
1952(昭和27)年11月15日 | 【駅名改称】古樋→浜小清水 |
1956(昭和31)年4月10日 | 【駅名改称】上札鶴→緑、札鶴→札弦、上斜里→清里町 |
1958(昭和33)年6月1日 | 釧路駅〜摩周駅間に準急「摩周」が新設。 |
1962(昭和37)年10月1日 | 【駅新設】南斜里 |
1964(昭和39)年6月1日 | 【仮乗降場新設】原生花園 |
1967(昭和42)年4月1日 | 【仮乗降場新設】桂台 |
1974(昭和49)年7月21日 | 釧路駅〜弟子屈駅間で「SLさよなら列車」を運転(牽引機はC58 418)。 |
1978(昭和53)年10月2日 | 【仮乗降場廃止】原生花園 |
1984(昭和59)年2月1日 | 客貨混合列車が廃止され、客貨分離が完了。 |
民営化以後 | |
1987(昭和62)年4月1日 | 【承継】北海道旅客鉄道(第1種)、日本貨物鉄道(第2種)【仮乗降場→駅】桂台 |
1987(昭和62)年7月1日 | 【臨時駅新設】原生花園 |
1987(昭和62)年8月8日 | 【臨時駅新設】谷地坊主村(8月10日廃止) |
1988(昭和63)年3月13日 | 【駅名改称】川湯→川湯温泉 |
1988(昭和63)年7月23日 | 【臨時駅新設】釧路湿原 |
1990(平成2)年11月20日 | 【駅名改称】弟子屈→摩周 |
1991(平成3)年11月1日 | 全線ワンマン化 |
1996(平成8)年12月1日 | 【臨時駅→駅】釧路湿原 |
1998(平成10)年4月11日 | 【駅名改称】斜里→知床斜里 |
2001(平成13)年9月16日 | 釧網本線全通70周年記念式典挙行 |
2002(平成14)年4月1日 | 【第二種鉄道事業廃止】日本貨物鉄道 全線 (-166.2km) |
2007(平成19)年10月1日 | 全線で駅ナンバリングを実施。 |
2016(平成28)年2月28日 | この日を最後に「流氷ノロッコ号」が運行を終了。 |
2016(平成28)年8月21日 | 台風9号による降雨災害の影響で、鱒浦駅〜桂台駅間(東釧路起点161.92km地点・同162.2km地点付近)に土砂が流入。塘路駅〜茅沼駅間(東釧路起点27.950 km地点付近)にて線路冠水。このため、東釧路駅〜知床斜里駅間が運休となる。 |
2016(平成28)年9月9日 | 東釧路駅〜摩周駅間が一時的に運転再開。その後、再び冠水したため再度運休。 |
2016(平成28)年9月14日 | 東釧路駅〜摩周駅間が午後から運転再開。 |
2016(平成28)年9月16日 | 摩周駅〜知床斜里駅間が午後から運転再開。 |
2017(平成29)年3月4日 | 【駅廃止】五十石。 |
2018(平成30)年3月9日 | 気温上昇のため、細岡駅〜摩周駅間で線路の冠水、道床流出等が多数発生。全線で始発から運転見合わせ。 |
2018(平成30)年3月12日 | 釧路駅〜標茶駅間で通学生の救済を目的としたバスを運行開始(1日2往復)。 |
2018(平成30)年3月16日 | 釧路駅〜塘路駅間の一部列車の運転を再開。 |
2018(平成30)年3月17日 | 塘路駅〜知床斜里駅間の一部列車の運転を再開。 |
2018(平成30)年3月18日 | 全線で運転を再開。 |
2018(平成30)年4月1日 | 緑駅〜網走駅間で「スマホ定期券」サービスを開始。 |
2019(平成31/令和元)年4月26日 | 沿線の魅力を音声ガイドで紹介するGPSアプリを展開開始。 |
2019(平成31/令和元)年10月21日〜10月25日・10月28日〜11月1日 | 線路の集中的な修繕工事の実施に伴い、緑駅〜網走駅間の一部列車が運休。 |
2020(令和2)年3月10日 | 低気圧通過に伴う大雨と雪解けの影響で、冠水、土砂流入、路盤流出等が発生。全線で始発から運転見合わせ。この時点では、代行バスの運行は無し。 |
2020(令和2)年3月12日 | 網走駅〜知床斜里駅間の一部列車(上下各1本)の運転を再開。 |
2020(令和2)年3月14日 | 南弟子屈駅が廃止。 |
2020(令和2)年3月28日 | 知床斜里駅〜緑駅間の運転再開に伴い、網走駅〜知床斜里駅間の一部列車(上り1本)の運転区間が拡大。 |
2020(令和2)年4月1日 | この日から、平日のみ、網走駅〜緑駅間(下り1本)および摩周駅〜釧路駅間(上下各2本)でバス代行を実施。 |
2020(令和2)年4月8日 | 網走駅〜緑間において、一部列車(上下各2本)が運転再開し、網走駅〜緑駅間のバス代行の実施を終了。 |
2020(令和2)年4月17日 | 緑駅〜東釧路駅間の運転再開に伴い、再び全線で運転を再開。これに伴い、摩周駅〜釧路駅間のバス代行の実施を終了。 |
2020(令和2)年10月19日〜10月23日・10月26日〜10月30日 | 線路の集中的な修繕工事の実施に伴い、網走駅〜知床斜里駅間の一部列車が運休。 |
2021(令和3)年3月13日 | 南斜里駅が廃止。 |
2021(令和3)年10月18日〜10月22日 | 網走駅〜浜小清水駅間での線路の集中的な修繕工事の実施に伴い、網走駅 - 知床斜里駅間の一部列車が運休。 |